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管理されてない核燃料物質が見つかる [新潟大学]

 

 

 

どうも、Haruです( ´ ▽ ` )

 

 

 

 

今回は、昨日ニュースになった

新潟大学で管理下にない核燃料物質が見つかった事件について

書いていこうと思います。

 

 

 ↓  Yahooニュース

headlines.yahoo.co.jp

 ↓  新潟大学HPからの発表

www.niigata-u.ac.jp

 

 

 

 

 

 

[目次] 

1. 事件の概要

2. やばいぞ、『硝酸ウラニル』!!

3. 今後の対応に注目

 

 

 

 

 

 

 

1. 事件の概要

 

事件の概要ですが、

『硝酸ウラニル』という核燃料物質(通常は原子炉などで使用するもの)が、

新潟大学の敷地内で発見されました。

この事件のまずい点は、以下の2点になります。 

 

①法律に従って管理しなければならない物質が、管理されていなかった。

②一般区域(放射性物質は、基本的に管理区域という特別な場所でのみ使用できる)で核燃料物質が見つかってしまった

 

 

 

 

 

さぁ、これかなりやばいです。

 

 

 

 

 

まず①ですが、

通常このような人体に危険が及ぶような物質は、

法律で使用や保管、廃棄などが規制されています。

特に今回見つかった『硝酸ウラニル』という物質は、

3種類の法律が絡んでくるかなりやばいヤツです。

 詳細については、

2. やばいぞ、『硝酸ウラニル』!!

で書きますね。

 

 

 

 

 

 

次に②ですが、

先にも述べたように、このような物質は法律で使用が規制されます。

つまり使用する場所なども規制されており、

通常は管理区域といった、放射性物質などを取り扱える区域内でのみ使用・保管できます。

こんなものが、皆さんが住むような一般区域で(今回は大学構内でしたね)、

「ヤッホー」みたいなノリで出てきたからビックリな訳です( ´Д`)

 

皆さんは部屋の掃除してて、手榴弾が出てきたら焦りますよね?

私みたいな放射線の管理担当からしたら、そのくらいの衝撃なのです。

 

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ただ、新潟大学からの発表によると、

この物質から出る放射線はごく微量なため、

人体への影響はないと発表されています。

 

よくこういう公式の発表は、「本当に?」と疑いたくなりますが、、、、

でも放射線取扱主任者の私が言います、

大丈夫です!!

不安に思っている方々は、安心してください。

放射線量の測定で、0.12μSv/hという値であり、

 この値であれば人体への影響はありません。

 

 

 

でも人体への影響がないとは言え、

管理されていなかったことは大きな問題であり、

近隣住民の方や新潟大学の学生に与えた不安は大きいはずです。

今後どの施設もこのようなことがないようにしたいですね( ´Д`) 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. やばいぞ、『硝酸ウラニル』!!

 

さて、今回見つかった物質は『硝酸ウラニル』というもの。

 ↓ Wiki

ja.wikipedia.org

 

先にも述べたように、

この『硝酸ウラニル』という物質は、

3種類の法律が絡んでくるかなりやばいヤツなのです。

その3種類の法律というのが、この3つ。

 

 

①消防法(危険物第一類)

放射線障害防止法

③核燃料物質および原子炉の規制に関する法律

 

 

 

マニアックですが、解説していきたいと思います。

*1つ1つがかなりマニアックですので、興味のある方のみ推奨ヽ(´ー`)

 

 

 

 

 

 

まず①の消防法(危険物第一類)について。

これは、『硝酸ウラニル』の特に『硝酸』の部分が問題となってきます。

硝酸は酸化性個体というものであり、

他のものを燃やす力が非常に強い物質です。

つまり、可燃性のもの(紙や木くずなど)と一緒に燃えた場合、

相手をよく燃やし大きな火災となる危険性がある物質です。

そのため消火が困難な危険物として消防法という法律で規制されており、

ある量以上を保有する場合などは、厳重な管理が求められます。

ただ今回見つかった量は微量なので、特に法律により規制されることはなさそうです。

*当ブログ管理人は「危険物取扱者・甲種」を保有しておりますが、

 専門ではありませんので詳細が気になる方は「危険物 第一類」で検索してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

次に②放射線障害防止法について。

これは、『硝酸ウラニル』の特に『ウラニル』の部分が問題となってきます。

ラニルというと「?」となる方も多いと思いますが、「ウラン」のことです。

福島第一原発のニュースなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

 

つまりこれは原子力発電所などで利用される、核燃料です。

そう!『硝酸ウラニル』は核燃料物質なのです。ここ重要( ´ ▽ ` )

しかしここで説明している放射線障害防止法に関係する政令では、このような記載があります。

 

 ↓  放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令政令)より抜粋

第一章 放射性同位元素等の定義
(放射性同位元素)
第一条 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(第二十条の三第二号及び第二十条の四第一号を除き、以下「法」という。)第二条第二項の放射性同位元素は、放射線を放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物(機器に装備されているこれらのものを含む。)で、放射線を放出する同位元素の数量及び濃度がその種類ごとに原子力規制委員会が定める数量(以下「下限数量」という。)及び濃度を超えるものとする。ただし、次に掲げるものを除く。
一 原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質及び同条第三号に規定する核原料物質
二 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品及びその原料又は材料であつて同法第十三条第一項の許可を受けた製造所に存するもの
三 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院又は同条第二項に規定する診療所(次号において「病院等」という。)において行われる医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十七項に規定する治験の対象とされる薬物
四 前二号に規定するもののほか、陽電子放射断層撮影装置による画像診断に用いられる薬物その他の治療又は診断のために医療を受ける者又は獣医療を受ける獣医療法(平成四年法律第四十六号)第二条第一項に規定する飼育動物に対し投与される薬物であつて、当該治療又は診断を行う病院等又は同条第二項に規定する診療施設において調剤されるもののうち、原子力規制委員会厚生労働大臣又は農林水産大臣と協議して指定するもの
五 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第四項に規定する医療機器で、原子力規制委員会厚生労働大臣又は農林水産大臣と協議して指定するものに装備されているもの
放射線発生装置)

 

 

この放射線障害防止法で規制されるのは、放射性同位元素という放射線を出す物質です。しかし『硝酸ウラニル』は放射線は出すが核燃料物質でもあるので、上述の通り放射性同位元素からは除外されるのです。

 

さぁ、ややこしくなって参りました。(_ _).。o○

 

では、なぜ『硝酸ウラニル』が放射線障害防止法に関係しているのか?

これには物理学的なカラクリがあるのです。

この硝酸ウラニルのウランの部分は、物理的に非常に不安定であり、いろいろな物質に変化していきます(壊変という)。

実はこの変化した先の物質も放射線を出す能力があり、これが核燃料物質ではなく放射性同位元素なのです。

つまりこの硝酸ウラニルには、ウランから変化した放射性同位元素が少なからず含まれており、それが放射線障害防止法の規制に関わってくるのです!!

 

 

 

 

 

 

最後に、③核燃料物質および原子炉の規制について。

②でも述べたように、『硝酸ウラニル』の「ウラン」部分は核燃料物質です。

そのため、③の核燃料物質および原子炉の規制に関する法律が関係してくるのは、簡単に分かりますね( ´ ▽ ` )

ただ、ここでさらに重要なのが、、

この『硝酸ウラニル』、、なんと、、

 

『国際規制物質』という物質に指定されているのです!!

 

 

さて、『国際規制物質』とは何か?

これは簡単にいうと、核爆弾の製造などに悪用されないように、IAEA国際原子力機関)などが国際的に約束し取り決めた物質のことであり、使用などには特別な手続きが必要になるものです。

つまり、、放射線を出す物質の中でも、最も厳重に管理が必要となる物質といっても過言ではないのです。。。

 

 

衝撃ですよね。

こんな物が大学の構内からさらっと出てきたんですから。

先ほど皆さんが部屋の掃除してて、手榴弾が出てきたら焦りますよね?

と言いました。

もはや手榴弾ではなく、核爆弾の製造原料が出てきたのです。

放射線管理担当は、今頃泣いているでしょう・・・・。

 

 

 

 

さて、ここまで述べたように、

今回出てきた『硝酸ウラニル』は、以上の3つの法律が関係しています。

ただどの法律に関しても、規制される量と比べてごく微量ですから、健康などへの影響はないと言えますのでご安心を。

 

 

 

 

 

 

 

3. 今後の対応に注目

 

さて、今回『硝酸ウラニル』 という、

インパクト大の物質が見つかってしまった新潟大学

今後、地域住民・在学生への説明や、

原子力規制員会への再発防止策の提出など、

やるべきことが山積していますね。

 

 

きっと来年度の放射線関係の教育では、

新潟大学の名前と今回の件が取り上げられ、

「管理はしっかりしましょう」というお話がいろんな場所でされることでしょう。

 

私も日々放射線取扱主任者として働く中で、

放射線作業への慣れや放射線に対する危機感の薄れも出てきます。

そのため今回の一件は、私的にも良い戒めとなった事件となりました。

 

 

 

新潟大学放射線取扱主任者の方にエールを送って、

今回はこれで終わりとしたいと思います。

 

 

 

では、またヽ(´ー`)

 

 

 

 

 

 

 

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