どうも、Haruです( ´ ▽ ` )
今回の記事では、前半は主に、がんのこと、がんの放射線治療のこと、
後半は、私の大学院時代の専門領域でもあった重粒子線治療のことを書いていきます✏️
*当ブログ管理人は放射線取扱の専門であり医師ではないため、あくまでがん治療に対して物理学的側面(放射線という観点)からのアプローチをいたします。医療行為に対する相談などは、担当医などにご自身の責任でご相談ください。
[目次]
1. がんと治療方法
2. がんの放射線治療について
3. 重粒子線治療について
1. がんと治療方法
がん。。。。医療の発達した現代でも日本人の死因第一位になっています。
今や日本人の2人に1人が、がんで亡くなると言われております。
「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)」厚生労働省のデータ引用
日本人の死亡原因の1位は男女とも「ガン」、部位別では「気管支および肺」 - シニアガイド
*悪性新生物とは医学用語であり、いわゆる「がん」をさします。
ここでは詳しい説明は避けます。がん保険などに入る際は、
「悪性新生物」「上皮内新生物」などで検索してみるといいでしょう。
がんによる日本人の年間の死亡者数は、約37万人。
1日あたり何人ががんで亡くなっているかというと、
37万人 ÷ 365 ≒ 1000人!!
なかなか衝撃ですね。。。。
毎日毎日、がんで1000人以上の人が亡くなっているとは、、、、
しかし 医療の発達により、現在がんに対して様々な治療方法が確立されています。
それらを大別するとがんの治療方法は、主に3種類に分けることができます。
・外科療法 → 手術などにより物理的にがん細胞を取り除く
治療範囲:局所的 侵襲性:大
・放射線療法 → 体内もしくは体外から放射線を照射し、がん細胞を殺す
治療範囲:局所的 侵襲性:小
・化学療法 → 投薬などにより、化学的な作用でがん細胞を抑制または殺す
治療範囲:全身 侵襲性:中
*今のところ、化学療法単独での根治不可
がんの治療はこれらの治療方法を組み合わせて、
がんの種類・ステージによって最適な治療を医師が決定します(集学的治療)。
ただ日本では主に外科療法、つまり手術がメインで治療されております。
これはこれでいいのですが、日本は海外と比べて放射線治療の利用がかなり少ないです。
理由は様々だと思いますが、
日本の外科技術が優れていること、患者負担の手術費が海外に比べ安いこと、放射線に対して日本人が敏感であること、放射線治療についての理解が遅れていることなどが挙げられると思います。
そんな日本ではどちらかというとニッチな放射線治療ですが、
この放射線治療、様々な種類があるのです。
放射線療法の最大の特徴に、
「ほとんど痛みがない」
という利点がまず挙げられます。
外科療法や化学療法は、手術や抗がん剤の副作用のため体へのダメージ・負担がどうしても大きくなてしまいます。
しかし放射線療法は、ほとんど痛みも感じず、副作用もほぼなくがんの根治を目指すことができます。
これだけでも放射線治療すげー!なのですが、、
次の章では、いよいよこの放射線治療について深掘りしていきたいと思います( ・∇・)
がん治療に利用される放射線は、下図のように3つに分類することができます。
1. 電磁放射線(X線治療)
→ 電磁波、つまり光と同じ。エネルギーを持った電磁波(光)をがん細胞に照射して、ダメージを与えて殺します。現在最も利用されている一般的な放射線治療です。
2. 粒子放射線(粒子線治療)
→ 荷電粒子、つまり目に見えないほど小さな電気銃弾のようなものをがん細胞に照射して、ダメージを与えて殺します。特に粒子の重さが重いものを、重粒子と言います。
3. 粒子放射線(ホウ素中性子捕獲療法)
→ これについては少し説明すると長くなりますので、別記事で紹介します。簡単にいうと、中性子という粒子を体内にあらかじめ投薬しておいたがん細胞を殺 す起爆剤のようなものに当てて、体内でエネルギーを発生させ、そのエネルギーでがん細胞を殺します。
これらの放射線ですが、がんの種類やがんのできた部位によって、治療の得意不得意があります。また使用する放射線の種類によって、治療にかかる時間や、治療費などが変わってきます。
ただ、医学・物理的側面から比較する上で 特に重要なのが、放射線が体に照射されたときのダメージの与え方。
図の相対線量は、体へのダメージだと思ってください。
この図からわかることは、電磁放射線(X線治療)だと体内表面から徐々にエネルギーを落とし、粒子放射線(粒子線治療)は体の深いところでエネルギーを落とす特性(これを、Bragg-Peakと言います。マニアック!!笑)があるということです。
もし体内深部にがんがある場合、電磁放射線だとがんに対して十分なダメージを与えようとした場合、皮膚でのダメージも多くなってしまいます。
しかし粒子放射線の場合、体内表面でのダメージは避け、がん病巣にのみ上手くダメージを与えることができます。
つまり粒子線治療は、正常な組織へのダメージは少なく、がん細胞に的確にダメージを与えることができるのです。
粒子線治療すげー・・・・・!
ただ近年では、X線治療の方法がどんどん進化し、粒子線治療と同等の治療効果を発揮しています(高精度放射線治療)。一概に、この放射線治療がいい!とは言い難い時代になりました(いい意味で)。
がんに対してどの放射線治療が適切なのかというのは、お金の面や治療の時間などを考慮し、医師が最適な方法を提案してくれるはずです。
もっと詳しい解説や、どのがんがどの治療方法に適応するか・費用は?などの疑問は、国立がん研究センターのHPに非常に分かりやすくまとまっています。
↓
ganjoho.jp
ここからは、前節で説明した放射線の中でも、
粒子放射線の一種の重粒子・重粒子線治療について説明していきます✏️
さぁ、概要は先ほど説明したように、
がん細胞に効率よくダメージを与える優れものの粒子線。
では、粒子線と重粒子線では何が違うの?
ということを説明します。
まず、粒子線。
これは、簡単に言えば陽子(=水素原子(H))です!
中学の理科で習ったことがあると思いますが、
陽子という非常に小さな粒子を使用して治療するのが、一般的に粒子線治療と呼ばれます。
一方、重粒子線。
これは、炭素(C)や窒素原子(N)を利用したものになります。
なぜ、これを重粒子と呼ぶのか。
それは単純で、陽子(=水素原子)より炭素や窒素原子が重いからです!
・・・・・重いと何かいいことがあるの(`・ω・´)?
あるんです!
皆さん、相撲やボクシング、柔道など対人で戦うことを想像してください。
相手が自分よりとても重く、大きかったら不利ですよね?
粒子線治療でも同じようなことが言えるのです。
粒子が大きく、重さが重いほど、がん細胞に与えるダメージというのは非常に大きくなります。
そのため陽子線治療よりも重粒子線治療の方が、がん細胞に与えるダメージは大きいのです。
また先ほど出てきた図をもう一度見てみましょう。
図を見ると、重粒子線治療の方が陽子線治療よりも、がん細胞のある場所により鋭いピークが立っていますよね?
これは陽子線治療よりも、重粒子線治療の方がよりがん細胞に対してのみダメージを与えることを表しているのです。
ただ近年では、X線治療と同じように、様々な陽子線の治療方法が出てきており、重粒子線治療と陽子線治療の治療効果の違いが無くなってきました。逆に重粒子線治療についても様々な治療研究がされており、現在まだまだ発展途上です。
どちらの治療方法がいいというのは難しいですが、
この記事を読んで少しでも放射線治療の種類やそれらの違いについて知ってくれれば、私は嬉しいですm(_ _)m
[まとめ]
今回は、がん治療全般のことから重粒子線治療まで、駆け足で書きました。
まとまりきらなかった点もありますが、ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
今回の記事で書いたポイントを、以下にまとめます。
- がんの治療は、[手術] [放射線] [薬] の組み合わせで治療
- 放射線治療は、[X線治療(高精度X線治療含む)] [粒子線治療(重粒子線治療含む)] [中性子線治療] に分けられる
- 粒子線治療は、X線治療よりもがん細胞に効率よくダメージを与える
- 重粒子線治療は、陽子線治療よりもがん細胞に与えるダメージ量、ダメージの集中性が良い
今回はこの辺で、ではまた( ´ ▽ ` )
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