放射線取扱主任者ブログ

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放射線取扱主任者とは 〜放射線取扱主任者のお仕事〜

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沖縄での学会終わりに撮影した海



 

 

こんにちは、Haruです( ´ ▽ ` )

 

 

今日は、私のお仕事の1つである、

放射線取扱主任者

について書いていきます✏️

 

 

 

[目次]

  1. 放射線とは・・・

  2. 放射線取扱主任者について

  3. 私のお仕事(実際の業務)

 

 

 

  1. 放射線とは・・・

 

最近よく耳にする放射線。。。

どちらかと言えば、日本では悪い噂ばかり聞くような気がします( ;  ; )

 

福島原発、被曝、がん・・・・

 

使い方を間違えば、

人間・地球に対して脅威となることは間違いないです。。

 

 

 

 

 

そもそも放射線とは、日本の法律の「原子力基本法」の中で定義されており、

 

放射線」とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつもので、政令で定めるものをいう。

 

とされています。

そして、さらにこの「政令」というのが、

 

核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令
   
  昭和32年11月21日 政令第325号
最終改正 昭和63年3月29日 政令第62号

放射線の定義に関する政令

 

であり、この政令のなかで、

 

(1)アルファ線重陽子線、陽子線その他の重荷電粒子線及びペータ線

 (2)中性子

 (3)ガンマ線及び特性エックス線(軌道電子捕獲に伴って発生する特性工ックス線に限る。)

 (4)1メガ電子ボルト以上のエネルギ一を有する電子線及びエックス線

 

とされています。

 

 

 

ややこしい!!笑

 

 

 

法律やら政令やら、同じ文書で定義してくれればいいものを(笑)

 

 

 

・・・・つまり、、

 

 

 

放射線とは簡単にいうと、

 

「目には見えない電磁波(光の一種で)、通過した物質や生物にダメージを与えるもの」

 

と思ってもらえばいいです。 

 

 そしてこの放射線を出す能力のことを「放射能」といい、

この能力を有している、つまり放射線を出す物質のことを、

放射性物質」といいます。

 

 

放射線、放射能、放射性物質の違い|エネ百科|きみと未来と。

 

 

 

 

 

さらに以下は少しマニアックになりますが、

放射線取扱主任者を取る人は、普通に知らなきゃ大変です( ・∇・)

 

先ほどまで説明した放射性物質は、原子力基本法の中である基準値(数量と濃度)が設けられており、その基準値を上回る場合、管理が必要であるとされます。

この基準値を上回るものを法令上、「放射性同位元素(RI)」と呼びます。

 

↓  放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令より

第一章 放射性同位元素等の定義
(放射性同位元素)
第一条 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(第二十条の三第二号及び第二十条の四第一号を除き、以下「法」という。)第二条第二項の放射性同位元素は、放射線を放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物(機器に装備されているこれらのものを含む。)で、放射線を放出する同位元素の数量及び濃度がその種類ごとに原子力規制委員会が定める数量(以下「下限数量」という。)及び濃度を超えるものとする。ただし、次に掲げるものを除く。
一 原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質及び同条第三号に規定する核原料物質
二 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品及びその原料又は材料であつて同法第十三条第一項の許可を受けた製造所に存するもの
三 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院又は同条第二項に規定する診療所(次号において「病院等」という。)において行われる医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十七項に規定する治験の対象とされる薬物
四 前二号に規定するもののほか、陽電子放射断層撮影装置による画像診断に用いられる薬物その他の治療又は診断のために医療を受ける者に対し投与される薬物であつて、当該治療又は診断を行う病院等において調剤されるもののうち、原子力規制委員会厚生労働大臣と協議して指定するもの
五 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第四項に規定する医療機器で、原子力規制委員会厚生労働大臣又は農林水産大臣と協議して指定するものに装備されているもの

 

 

この文章から、核燃料物質(ウランやプルトニウム)は、

放射性同位元素としてではなく核燃料物質として扱うことが分かります。

性質上、より厳しい条件で管理しなければならないからでしょう。

 

 

また別記事で紹介しますが、

PET検査(がんの検査など)に使われるものも除かれることが分かります。

これは半減期放射能が半分になる時間・期間のこと)がかなり短いため、

他の放射性同位元素と比べて安全であるとし特別扱いを受けています。

 

 

 

 

 

 

   2.  放射線取扱主任者について

 

前節で説明した放射性物質放射線発生装置も含む)を、適切に安全に利用できるように管理するのが、

 

放射線取扱主任者

 

の役割!!

 

目には見えない銃弾を管理するようなお仕事、、

なんだかカッコよくないですか?笑

 

 

 

 

放射線取扱主任者は、国家資格であり、

扱える放射線のレベルによって、三段階に分かれています。

 ・第一種放射線取扱主任者(一番レベルが高く、一般的に皆が受験するもの)

 ・第ニ種放射線取扱主任者

 ・第三種放射線取扱主任者

試験は年に1回原子力安全技術センターにより、8月に実施されております。

      *試験を受けるにあたっての受験資格や制限などはありません。

原子力安全技術センター

 

↓  合格率はこんな感じ(第一種放射線取扱主任者

試験施行日

受験者数 (A)

合格者数 (B)

合格率 B/A

第53回

平成20年8月20日~21日

3,570

1,229

34.4%

第54回

平成21年8月19日~20日

3,815

856

22.4%

第55回

平成22年8月25日~26日

3,822

945

24.7%

第56回

平成23年8月24日~25日

4,077

1,225

30.0%

第57回

平成24年8月22日~23日

4,218

978

23.2%

第58回

平成25年8月21日~22日

4,179

1,233

29.5%

第59回

平成26年8月20日~21日

3,678

951

25.9%

第60回

平成27年8月19日~20日

3,853

1,181

30.7%

第61回

平成28年8月24日~25日

3,678

788

21.4%

第62回

平成29年8月23日~24日

3,767

819

21.7%

第63回

平成30年8月22日~23日

3,558

843

23.7%

 

合格率は、だいたい20~30%を推移していますね!

ただ、素人が受けているわけではなく、

理学部系や医療系(特に放射線技師の方)の学生や卒業生が受験しているため、

この合格率は決して高いとは言えないと思います。

 

 

しかも・・・・、

 

 

 

 

 

 

合格してもすぐに放射線取扱主任者になれないのです!

放射線取扱主任者になれるまでは、下記のような流れが必要です。

 

放射線取扱主任者試験に合格

放射線取扱主任者講習を修了し(試験あり)、免状の交付を受ける

原子力規制庁に対して、選任届けを提出する

 

この②の講習会は、2019年1月時点で下記の4カ所で開催されています。

原子力安全技術センター

第1種放射線取扱主任者講習【公益社団法人日本アイソトープ協会】

第1種放射線取扱主任者講習 | 講習会申込み | 一般財団法人 電子科学研究所

[RI・放射線技術者の養成]第1種放射線取扱主任者講習|JAEA原子力人材育成センター

 

 

そして、この講習会費が高い!!

どこで受講しても15 ~ 16万くらいかかります。

 

 

個人的には、試験に合格だけしておいて、

企業や病院に入った後に、上司に相談して会社のお金で参加すべきです。

私は実際そうでした。

私の知り合いには、私金で行った強者もいましたが(笑)

 

 

また、これから講習会に参加しようと思っている人!

 

 

私的には、「原子力安全技術センター』の講習会をオススメします。

 

 

理由は2つ。

 

1. 放射線取扱主任者試験を実施しているのは、「原子力安全技術センター』。

 これは国からお墨付きをもらった機関である証拠、プラスそれに準拠したしっかりとした講習を行ってくれるから(他の団体がしっかりしていないというわけではありませんが・・・・。)。

↓  原子力安全技術センターの講習会の内容

https://www.nustec.or.jp/1syunin/1syunin01.html

 

2. 実施場所が京都大学

 京都大学放射線利用施設を使用できます。個人的興味ですが、私は研究所などの施設を見学したりするのが好きなのでいい勉強になりました。

 また京都大学は、放射性物質を取り扱う施設で火災が起こしていて、これを扱った安全管理実習なども実施してくれます。放射線取扱主任者は緊急時や事故時こそ、適切な対応を迫られることから、このような実例を元に勉強できるのは大切だと思います。

ringosya.jp

 

 

 

ここまで、放射線取扱主任者について説明してきましたが、

試験に合格するだけでは放射線取扱主任者にはなれず、

色々とめんどくさいことがお分かりいただけましたか?笑

 

 

ただ就活などでは、 

この資格を持っているだけでアピールにもなるので、

試験に合格するだけでも価値はあります!!

 

 

 

 

   3.  私のお仕事のついて

 

最後に、Haruの放射線取扱主任者としての日々のお仕事について、

書いていきたいと思います( ´ ▽ ` )✏️

 

詳細に書くとそれはもう膨大なので、

ここでは簡単に、わかりやすく崩して書きますね!

 

 

放射線取扱主任者としての主な業務

  1. 放射線物質や放射線発生装置の「使用」「保管」「廃棄」などに関する記録などの管理
  2. 人や場所に関する測定(作業者の被ばく量の測定、施設の放射線の量の測定など)
  3. 施設の放射線管理状況の国への報告(放射線取扱主任者の選任状況、その施設での放射線利用の実態など)

 

 

上記の1と2が、放射線取扱主任者(以下、主任者)の主な業務となります。

 

 

 

まず1ですが、放射線取扱主任者が必要な施設(工場や病院)では、

日々 放射性物質放射線発生装置を使用しています。

 

 主任者は日々それらが適切に使われているか、

どれだけ使用・保管・廃棄したか、

などを細かに管理し、記録しなければなりません。

 

この記録の作業が実はかなり大変!

 

大抵、抜けがあったり、間違っていたりします(泣) 

間違っていると、この記録がおかしいではないか!と

お国の人から怒られてしまいます、、、。

そのため主任者は日々、記録を作成し、管理をしっかりしていくことが重要です。

 

 

 

 

 

 

次に2ですが、

病院や施設で働く人がどれだけ放射性物質の影響を受けているかの測定、

また施設の放射線の量などの測定を毎月し、管理・記録しています。

特に人の被ばくに関する限度(線量限度)はとても重要で、労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則により、下記のように制限されています。

 

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線量限度

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/201510mat1s-01-12.pdf#search=%27線量限度%27

 

おおよそ日本人が普通に生活していて被ばくする量は、

2.1mSv/年

とされています。

この値がどの程度のものなのかというと、

身体に優位なリスクとはならない(科学的に証明できていない)レベルです。

25倍に当たる線量限度の50mSv/年でも、がんなどの優位なリスクにはなりません。

 

つまりこの線量限度に対して作業者の被ばくが常に大丈夫か、安全な範囲なのかを主任者は管理する義務があります。

もし被ばく量が線量限度を超えそうな場合には(私の会社ではほぼないですが)、

作業者の代替や、作業の見直しなどを図る必要があります。

 

同じように施設の放射線量の測定に関しても基準値が設けられており、

測定結果が問題ないかなどをチェックしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、、

今回は初めて長めの記事を書き疲れたHaruであります( ´ ▽ ` )

 

まだまだ書きたいことは沢山ありますが、

また別の記事で書いて行くこととします。

 

 

ありがとうございました♩